学校教育で、新しい物作りの授業をする取組
〇3Ⅾプリンタが変える新しい物作りの考え方
★3Ⅾプリンタ製の治具を利用すれば、
実習(授業)の中で、ユニバーサルデザインの概念をより簡単に具現化できる。
★3Dデータがあれば同じ造形を簡単に作れる。
=作る人の加工技術に左右されにくい。
★刃物を使った引き算ではなく、足し算という新しい物作りで、さらに複雑な形を作れる。
→自動車業界などでは、より丈夫で軽量な部品を作るために、3Ⅾプリンタを活用し始めました。
・立方体の枠の中の球体 Ball in Cube 技術【8年】
・文部科学省のウェブサイト「各教科等の指導におけるICTの効果的な活用に関する解説動画」
学校での実践事例に基づき、「主体的・対話的で深い学び」の視点から作られた資料です。
技術の解説で、3DCAD(コンピュータによる3次元製図)を活用している学校が紹介されています。
令和3年度の活用例
開隆堂の技術分野学習指導書に「3Ⅾプリンタを通して、何を感じ、学ぶ?」が掲載されています。
本校の授業で利用した多数の3Ⅾデータの無償ダウンロードもしていただけます。
◇沖縄県立大平特別支援学校 中学部より、活用のお便りがありました。
Maker Meeting for Maker Faire Kyoto
Maker Faire Kyoto
青少年のための科学の祭典 奈良大会
に出展したパズルについての説明
〇本棚の組立 技術【7年】2月4日~
・冬休みの製図の宿題 技術【9年】12月21日
・グルーガンで工作 図工【6年】12月21日
個体を溶かし固めて立体的に造形する方法は、熱溶解積層方式の3Ⅾプリンタと同じです。
〇オンライン交流会2 技術 【8年有志】 私立追手門学院中学校⇔本校 12月11日
・【中2有志】奈良県月ヶ瀬小中学校との交流会(追手門学院中学校)
参加生徒は、他校での3Dプリンタ製クランプ冶具の活用を、このオンライン交流会で見ました。
「生きる力」や「GIGAスクール構想」がはじまった昨今、新たな教育観を身近に感ることができました。
・組立の前のけがき 技術【7年】12月10日
・仮組立 技術【7年】11月19日
・卒業製作 組立【9年】12月3日
・けがき 技術【7年】10月22日
3Ⅾプリンタ製の模型を用意することで、完成時のイメージをより明確にし、けがきを進めていきます。
授業時間の関係で、実習の作品の模型を生徒がCADで作るのは難しいので、教師が模型を用意しました。
・県産材を使った木材加工実習 技術【7年】10月15日
休み時間は、技術室にある3Ⅾプリンタに興味津々です。
◇空間図形の製図をタブレットPCを活用して発表 技術【8年】10月7日
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◇空間図形の製図 夏の課題 技術【8年】7月8日
・教科横断的な学び数学(一次関数)→技術(3Ⅾプリンタ)→美術(陶芸)【8年】9月2日
〇丈夫な構造 技術【7年】6月25日
白と青の模型は、実際に壊して、壊れ方を体験します。(模型を廊下に展示することで、体験は休み時間にできます。)
〇製図 技術【8年】6月24日
〇製図の課題 技術【7年】6月18日
2Dの手書きの製図では、錯視を利用して、平面に立体を描きます。
黄色い模型は、錯視の模型で、角度によって〇にも□にも見えます。
【反転授業への挑戦】
・反転授業(オンライン授業)と動画(デジタル教科書)のさらなる活用に向けて
写真ように実物に触れて学習できるのは、学校での授業ならではの醍醐味です。
反転授業(オンライン授業)を通して、基礎基本を事前に学習することで、限られた授業時間でさらに内容の深堀が出来ます。
技術室の3Ⅾプリンタ興味津々
Maker Faire Kyoto 2021に出展を予定していましたが、オンラインでの開催なりました。
令和2年度の活用例
〇3Ⅾプリンタで作製したクランプを利用して本棚を組立 技術【7年】2月~
本年度は、新型のクランプ(青色)の試験運用をしました。
〇オンライン交流会 技術【8年有志】私立 追手門学院中学校⇔本校 1月26日
授業の紹介で、生徒が、昨年度の本棚の実習について紹介しました。その際、クランプの話も出ました
◇【参考】空間図形について、各学年の学習風景
3-Dimensional Computer-Aided Design.
◇空間図形(数学)の製図をタブレット端末を活用して発表 技術【8年】10月23日
・休み時間、3Ⅾプリンタで作った3Ⅾパズルに夢中な小学生10月21日
◇空間図形(数学)→製図(技術)→3Dプリンタ→生活をより便利にできる! 技術【8年】10月15日
Spatial figure(Mathematics)→Drafting(Technology)→3D Printer→More convenient life.
授業で取り上げた観察池・ビオトープの水位を上げるために3Ⅾプリンタで作った道具。
「第三角法による正投影図」と等角図による製図
式から答えを求めるのではなく、答えから式を求める課題で、
一つの「答え」を求めるのではなく、「答え」から複数の「式」を予想する「深層学習(デープラーニング)」的な課題。
〇製図(目の錯覚)と、じょうぶな構造 技術【7年】 7月14日
写真下側:数学の知識を利用した見る視点によって■にも●にもみえる不思議な模型(錯視立体)
・3Ⅾプリンタを活用した強度試験(丈夫な構造)の復習 7月24日
・これまでの物作りと3Dプリンタでの物作りの違い・体験学習の重要性 技術【7年】8月3日
・たたら製鉄 技術・理科【9年】7月31日
出雲方面の修学旅行に向け、技術と理科の授業では、事前学習として刃物やたたら製鉄について学習しました。
1年の時に学習した「刃物を使った物作り」と「3Ⅾプリンタを使った物作り」を比較のおさらいからはじめました。
写真の手前のねじの長い白い蝶ねじのクランプは、試作なので、形状が違います。
・今年度は、3Ⅾプリンタの実践に対して、各地から複数の問い合わせがあります。
今後を見据え、先行して運用ノウハウを蓄積したかいがありました。ありがとうございます。
去年度(2019年8月)に、各都道府県の技術・家庭科研究会の事務局あてに、3Ⅾプリンタ製のクランプやパズルを送っています。
よろしければ、そちらもご参考下さい。
Maker Faire Kyoto 2020に出展を予定していましたが、オンラインでの開催なりました。
令和元年度の活用例 (令和元年度の技術の活用は、ページの中ほどにあります。)
・このクランプは、木材加工の実習で、作業効率を上げるために使ってます。
・他校や少年少女発明クラブなどでも、採用されてます。
組立の効率化と、質の向上をはかっています。
◎「個人でも色々なモノを作ることに挑戦できる時代」出前授業 技術【9年】当日の様子
3Ⅾプリンタで作った立体パズルつながりで、Maker蕪木孝さんによる出前授業をしていただきました。
授業では、最新の浮かぶ全自動ルービックキューブや、中身を身近に見せてもらいました
黒い部品は、3Ⅾプリンタで作られています。
〇「青少年のための科学の祭典2019」奈良大会 出展 技術 当日の様子
▽「青少年のための科学の祭典2019」奈良大会への出展決定 3Ⅾパズル 技術
・実習の3Dパズルなど、3Ⅾプリンタ関連の展示
・あの全自動ルービックキューブで世界に衝撃を与えたMaker蕪木孝さん特別参加
「生きる力 学びの、その先へ」に対する試行錯誤の一環です。
奥-ねんどで製作中、中央-音楽の笛、手前-3Ⅾプリンタで作った笛。
・音楽で、市販の笛を使います。
・美術で、笛を作ることの難しさを体験します。
・技術で、3Ⅾプリンタで作られた笛を身近に見ます。
結果、3Ⅾプリンタの潜在能力(可能性)を、身近に実感できます。
・木材加工の実習の休み時間、技術室にある3Ⅾプリンタに興味津々の7年生。
手前の集団が、3Ⅾプリンタの製造風景を食い入るように見ています。後ろの集団は、右写真です。
できたてのピンクの3Ⅾパズルを、土台(ラフト)からはずしています。
蕪木さんの全自動ルービックキューブの出前授業が縁で、ファブ施設から、本の寄贈がありました。ありがとうございます。
配布時、7年生の食いつきが良かったのは、今、木材加工の実習の授業をしている技術室で、3Ⅾプリンタの物作りを目の当たりに見ているからでしょうか。
・ろうかに展示され、気軽に3Ⅾプリンタ製の3Dパズル(孔明鎖、魯班鎖)を体験できます。
3Ⅾパズルとキューブのパズルも、ろうかで触って体験できます。(右側に見える丸太は、学校林の間伐材です。)
3Ⅾパズルが箱いっぱいあるのは、安定した3Ⅾプリンタの運用を探るために、3Ⅾパズルを量産して、3Ⅾプリンタの注意すべき点や消耗部品のサイクルを探っているからです。
技術の授業(令和元年度)
組立の効率化と、質の向上をはかっています
この治具(クランプ)は、令和元年、奈良市少年少女発明クラブの小学3、4年生の木工工作でも採用さえました。
Corner Clamp(Clamping Jig) made with 3D printer.
Making bookshelves using Corner Clamp(Clamping Jig) .
◇3Ⅾプリンタと既存の物作り(切削加工と組立)の違いを疑似体験。→実物を通した「主体的・対話的で深い学び」
Ball in Cube の発展型
空間図形の認識する力は、脳の発達(知的活動)に深くかかわっているかもしれません。
立方体を意味する「Cube」と、人工頭脳学を意味する「Cybernetics(サイバネエティクス)」の語源についてのこぼれ話を、[4.3 立方体の枠の中に球体]のデータ配布欄で紹介しています。
パソコンでの3Ⅾ表現や、3Ⅾプリンタを使った3次元による空間図形の可視化は、数学の理解を深める可能性を秘めています。
◇技術以外の教科でも、教育効果を上げるために3Ⅾプリンタを活用する試み
数学と技術の横断的学習の中で、STEAM教育の「批判的思考」を用い、創造的な問題解決をする。
STEM教育、STEAM教育を取り入れ、学校の枠組みの中で、時代にあった柔軟な教育を模索する取組です。
今回の実習できたえようとした力
①まじめにコツコツするねばり強さ
②ひらめく力
ひらめきにくい場合は、見本を見たりして、まねをすることから始める。
「学ぶ」の語源は、「まねぶ」で、まねをすることから学びが始まります。
③作業手順や段取りを見通す力(作業内容を調整する力)
県の技家研の研究大会で示された「主体的に学習に取り組む態度」の評価②の資料。
この授業で設定した上表の①が下写真の①「粘り強く学習に取り組む態度」と同等で、上表の③が、下写真の②「自ら学習を調整しようとする態度」と同等の内容であり、これらを総合して評価を考える事ができます。
3DCADは、紙に書く製図と違って、立体に見えない弱点や、見えない死角がなく空間図形をより観察できます。
3次元的に視覚化できることで、より深く空間図形を学び、2次元の紙に描いていた以前より、空間図形を想像することが可能になります。
◇空間図形(数学)の製図発表 技術【8年】 9月10日
大型TVに表示された図形は、とっても考えさせられる図形で、生徒同士の切磋琢磨の良い場になりました。
これも、互いの図形を発表し、共有し合うことで、新たなひらめき生まれた結果です。
◇立体造形や3Ⅾデータで確認 技術【8年】 9月5日
下写真は模範解答例です。3mf形式で作ってあるので、立体をより詳しく画面で確認できます。
3Ⅾプリンタは、刃物を使いこなす技量や、刃砥ぎの技量の差が出にくい。
刃物での加工を極めるには、今まで通り砥石の知識や刃砥ぎの技量が必要。
天然砥石(亀岡産) 荒砥←「青砥」「白巣板」「合砥」2つ→仕上砥
3Ⅾプリンタの可能生と、今までの物作りとの違いの解説。
今までの物作り:製図→加工(主に、切断)→組立→完成
必要とされるもの:鋭利な刃物(保守点検技術)
刃物の加工技術(匠の技)
3Dプリンタ :製図→製造→(組立)→完成
※組立不要のものもありますが、精密なものは、成型後、組立ます。
必要なもの:CADデータ
2ⅮCADをする際に、図形を立体模型で確認します。
3Dデータがあれば、簡単に模型を作れるので、
見て触って体感できる耐久試験も手軽に体験できます。
白い模型は、破壊試験用。黄色の模型は、非破壊で強度確認用。
・人の作業工程を減らし、手軽に作ることで、材料費はかかるが、製造原価を抑えることが可能。
↓
・耐久試験(破壊試験)のように造形物を消耗することを前提とした実験も手軽にできます。
以前から、薄い板をわって、繊維方向の違いによる強度の違いを体感する実験をしていました。
3Ⅾプリンタを使えば、さらに、製作に手間のかかる造形物も、耐久試験(破壊試験)に、気軽に消耗品として使えるようになります。
3Ⅾプリンタで作った製図用の模型は、回収し何度も使うこと前提の模型ですが、耐久試験(破壊試験)用の模型は、はじめから使い捨てを前提とした消耗品として作っています。
平成30年度の活用例
・平成30年度の本棚組立の実習風景
本棚のくぎ打ちの時に活用すると、より正確に接合できます。
・製図① 製図② ←「3Dプリンタとプログラミングの出前授業【6~8年希望者】」が事前の予習になっています。(出前授業 協力:奈良教育大学)
・説明書の企画 →【番外編】試される「意識の錯覚」【中】
・説明書制作 コンピュータグラフィック、動画、写真やQRコードの制作
・耐久試験(破壊試験)←3Dプリンタで作った3Ⅾパズルの部品の強度を壊して確かめました。
・3Ⅾプリンタが物作りに与える影響【7年】
・製図 技術【8年】
3Ⅾプリンタで作った模型を見ながら形を確認しながら作業をします。製図の課題プリントは、9年生が実習で使う2DCADを使って作っています。
3DCAD(コンピュータにより製図)と3Ⅾプリンタを駆使すれば、もっと手軽に物作りができる可能性があり、今までの物作りの常識が一変しかねません。
3Dプリンタで作った立体パズル 籠中取宝(孔明鎖、魯班鎖)。
ろうかに展示することで、休み時間に自由に3Dプリンタで出力されたパズルを手に取って観察できます。
【 技術革新によって、プロとアマの差が限りなく少なくなる世界で】
学校の教育活動に3Ⅾプリンタを手軽に導入できるのは、道具の技術革新(機器のデジタル化)により可能になりました。ここで紹介する実践例の充実も、この技術革新によるところが大きいです。
本校での3Ⅾプリンタの教育への活用は、私立のように特色ある学校を宣伝するために重要施策とされることもなく、3Ⅾプリンタの宣伝をしたい企業から寄贈や手厚いバックアップを受けているわけでもありません。研究指定校や、何かの授業実践の発表に選ばれているわけでもありません。
安価で高性能な3Ⅾプリンタがあれば、普通の公立の学校でも、ごく普通の日々の授業で、色々なSTEAM教育(STEM教育)の可能性が広がるのです。たとえ小さくても、この可能性が未来の物作りにつながると感じ、日々取り組んでいます。
地方のへき地の小中学校(小規模校)の技術の授業を通して、草の根活動的な取組としてコツコツと続けてきました。その活動が目に留まり、3Ⅾプリンタの書籍を中学生全員に寄贈をいただきました。ありがとうございます。